研究概要 |
左室拡張能障害と慢性腎臓病はともに心血管系イベントの独立した危険因子として現在注目されている。しかし、左室拡張能障害が独立して慢性腎臓病に関与するか否かは十分に検討されていない。我々は、心臓超音波検査を予定された成人患者のうち、既往に心臓弁膜症、先天性心疾患のない患者を連続して評価し、左室拡張能障害に慢性腎臓病が独立して関与する因子か否かを評価した。慢性腎臓病はGFR値60ml/min/1.73m^2. 未満と定義した。左室拡張能は、左室流入血流速波形、肺静脈血流速波形、組織ドプラ血流速波形の拡張早期波最大流速による分類を用い評価した。慢性腎臓病に関与する因子を多変量解析を用いて検討した。心臓超音波検査を行った1,209人のうち、全ての基準を満たす824人を対象とした(平均年齢59±15歳、男性53%、肥満7%、脂質異常症68%、冠動脈疾患10%、高血圧症48%、糖尿病19%、末梢動脈疾患2%、左室拡張能障害78%)。うち222人(27%)に慢性腎臓病を認めた。慢性腎臓病は年齢の上昇(オッズ比3.8, 95%信頼区間1.6-9.5P<0.01)、男性(オッズ比3.8, 95%信頼区間2.6-5.5, P<0.0001)、肥満(オッズ比2.0,95%信頼区間1.0-3.7, P=0.03)、高血圧(オッズ比2.7, 95%信頼区間1.9-3.9, P<0.0001)、末梢動脈疾患(オッズ比3.2, 95%信頼区間1.2-9.8, P=0.02)、左室拡張能障害(オッズ比2.0, 95%信頼区間1.3-3.2,P<0.01)と有意に関係があった。今回の結果から、左室拡張能障害は慢性腎臓病に独立して関与する重要な因子であることが示唆された。
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