-研究目的- 肺癌は癌死のなかで最も多く、その治療法の開発は急務である。そこで今回、私どもはDelta-like 4 (Dll4)中和抗体による肺癌治療について研究を行った。NotchはDll4のリガンドであるが血管形成においてきわめて重要な役割を果たしており、その遺伝子欠損マウスでは血管形成障害により胎生致死に陥ると報告されている。これまでに肺癌においてはNotchシグナルが亢進しており、そのリガンドのひとつであるDll4を阻害することによりNotchシグナルを抑えられ血管新生を阻害し癌治療に応用できると考えられる。そこで、Dll4中和抗体を用いて、担癌マウスモデルを用いDll4阻害抗体が肺癌治療への可能性を検討した。-結果- マウス肺癌細胞株(Lewis lungcarcinoma及び、KLN205)をマウスに移植し、生着が確認できた7日目から、Dll4抗体投与群、マウスIgG抗体投与群にわけ、投与した。Dll4抗体投与群は有意差を持って腫瘍増殖を抑制していた。それぞれの群の腫瘍を適宜摘出し、血管内皮細胞マーカーの免疫染色にて腫瘍内にはDll4抗体投与群では腫瘍血管の異常増殖を認め、さらに腫瘍内の酸素化の状態を調べるとDll4抗体投与群では明らかに酸素化の低下を認めた。これまでの報告では動脈管の形成にNotchシグナルを介し、重要な役割を果たしている。私どもデータでは異常血管形成(特に新生血管の剪定作業がスキップされる)が腫瘍組織への血流不全をおこし、腫瘍組織の増大を抑制する可能性を示していた。Dll4中和抗体は、分子標的治療であるVEGF阻害抗体耐性のできた癌に応用できる可能性が示唆された。
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