肺癌治療において、現在、抗VEGF受容体抗体、抗VEGF抗体など血管新生阻害剤が進行性肺癌の化学療法に併用するという新たな治療法として注目されている。しかし、実際にはこれらの血管新生阻害剤はすべての肺癌に効果がある訳でもなく、また、効果があったとしても一時期でいずれ再発となる. 今回の研究ではこの再発に効果があるだろうとという血管新生阻害薬としてDelta-like4中和抗体(Dll4)について報告する。Dll4は動脈管の形成にNotchシグナルを介し、重要な役割を果たしている.その遺伝子欠損マウスでは血管形成障害により胎生致死に陥ると報告されている。これまでに肺癌においてはNotchシグナルが亢進しており、そのリガンドのひとつであるDll4を阻害することによりNotchシグナルを抑えられ血管新生を阻害し癌治療に応用できると考えられる。最近さらに詳細にメカニズムがあきらかになってきており、異常血管形成(特に新生血管の勢定作業がスキップされる)が腫瘍組織への血流不全をおこし、腫瘍組織の増大を抑制する可能性が報告されている。今回の研究で明らかにできたことは、(1) Dll4中和抗体が肺癌扁平上皮癌、および腺癌の細胞株において血管形成阻害による腫瘍縮小作用があることをin vivoにて確認した。(2) Dll4中和抗体がEphrinB2を介してnon-productive angiogenesisをおこし、腫瘍増殖を抑えるメカニズムを発見した。(3) 以上のことから、肺癌だけでは無く、腫瘍血管を抑えるひとつの治療薬としてDll4中和抗体が人の治療でも有効である可能性があることを報告した。
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