前年までにSLPI結合タンパク質の候補として同定していたTaxREB107については、Blot overlay assay法を用いてもタンパク質の結合が確認できなかった。また抗SLPI抗体の作成も実験に使用できる抗体を作成できなかった。よって当該年度は新たな方法で再度SLPI結合タンパク質の検索を試みた。まずGST融合SLPIタンパク質を大腸菌に発現させ精製した。次にマウスから肺を取りだし、ホモジナイズしてマウス肺タンパク質抽出物を得た。このマウス肺タンパク質抽出物と、GST融合SLPIタンパク質をバッファー内でインキュベーションし、SLPIと結合するタンパク質をGST融合SLPIタンパク質に結合させる。その後グルタチオンセファロースを用いて、SLPIと結合タンパク質候補との複合体を精製し、そのタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、SLPI結合タンパク質の同定を試みた。SDS-PAGE後にCBB染色でタンパク質を可視化したが、SLPI結合タンパク質の候補となるタンパク質のバンドは検出されなかった。このことは当初はTaxREB107はSLPI結合タンパク質の候補であったが、アフィニティー精製法では非特異的に結合していた可能性が高く、またこれらの実験結果から、肺組織においてSLPI結合タンパク質は、極めて少数、少量のみ存在するか、またはアフィニティー精製法、Pulldown法では検出できない可能性がある。
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