研究概要 |
私はアドレノメデュリン(AM)が不足した喘息モデルマウスにおいて卵白アルフミン感作後の気道平滑筋層が有意に肥厚していることを示し、AMが気道炎症の修復過程における失敗を防ぎ、気道リモデリングを抑えている可能性を報告した(J Appl Physiol 102: 2361-2368,2007)。そこで、私は肺線維症における胞隔炎・線維芽細胞の浸潤過程、および肺気種における好中球やマクロファージ、CD4陽性T細胞を中心とした気道炎症の進展過程に対するAMの役割を示すため、まずこれらの病態を示すことが多いとされる高齢者におけるAMの役割を高齢マウスを用いて検討することとした。 まず、高齢マウスとして22ヶ月齢のAM遺伝子改変マウス(Old AMKO)およびその同腹子、コントロールとして12週齢のAM遺伝子改変マウス(Young AMKO)およびその同腹子を準備し、それぞれにおける肺機能、組織学的変化を検討した。まず肺機能については、Old miceにおける残気量(RV),残気率(RV/TLC)の有意な増加が認められた。一方、組織学的な検討の結果、平均肺胞間距離(Lm)がOld miceにおいて有意に長く、肺胞面積や破壊指数(DI)については有意な差を認めなかった。いずれもAM遺伝子改変の有無とは関連を見出せなかった。以上の結果から、高齢化により、肺の弾性収縮力が低下してエアートラッピングを生じさせる結果、残気量の増加やLmの増加を来たしているが、肺胞の破壊という点では高齢化の影響は少ないものと判断された。つまり、高齢化のみでは肺は形態学的に肺気腫の形態を示さず、むしろ末梢の気腔のみが拡大した「老人肺」の所見を示すことが示された。今後は喫煙負荷やブレオマイシン負荷を行って肺気腫、肺線維症のモデルを確立し、AMの多寡が与える影響を検討していく予定である。
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