研究概要 |
ATF3遺伝子に関して、肺癌細胞株(NCI-H520, Calu6)や肺癌臨床検体の58%(14/24)において発現が50%以下に抑制されていることを確認できたことから、次に、どのようなメカニズムで発現が抑制されているのか検討を行った。本実験では肺癌細胞株を脱メチル化剤(DAC)とヒストン脱メチル化阻害剤(SAHA)で処理した後に遺伝子発現の回復がみられていることから、遺伝子のメチル化についてmethylation specific PCR法でメチル化の定性を試みた。その結果、デザインしたプライマーでは非メチル化だけが確認されメチル化は確認できなかった。これに関しては本当にメチル化がないのか、あるいはプライマーをデザインしたCpG islandの場所に問題がある可能性も残されており、確定のためにはbisulfite sequencing PCR法でCpG island全体をチェックしてみることが今後の検討課題となった。また、マイクロアレイ実験から得られた遺伝子リストから他の新規癌抑制遺伝子候補として、現在までに報告されている遺伝子の機能を考慮し、GADD45β、RAI3、NDRG1、SNN、DSIPIが癌抑制遺伝子である可能性が非常に高いと推測された。これらの遺伝子について、まず肺癌細胞株(NCI-H520、-H460、-H522、Calu6)で発現の程度を調べた結果、マイクロアレイで使用したNCI-H520はもちろん、いくつかの肺癌細胞株で発現が50%以下に低下していることが確認された。同様に肺癌臨床検体を用いた解析でも、GADD45βは55%(6/11)、RAI3は48%(12/25)、NDRG1は27%(3/11)の症例で発現が50%以下に低下していることが分かった。このように肺癌においては多くの癌抑制遺伝子がその発現を抑制され、発癌や腫瘍増殖に関与していることが示唆された。
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