研究概要 |
本研究の目的は、デフェンシンや大気汚染物質が肺線維化に関わる機序を検討することである。方法は肺胞マクロファージや肺胞上皮細胞、肺線維芽細胞などの肺内細胞を用い、デフェンシンや大気汚染物質(PM10)を中心とした刺激に対する炎症性・線維化関連メディエーターの産生機序を明らかにすることによる。本年度我々は下記の点を明らかにした。1)PM10が気道上皮細胞から炎症性メディエーターを産生する機序に細胞内カルシウム依存性、非依存性の経路が関与していること2)主に好中球から産生されるαデフェンシンがヒト肺線維芽細胞でのコラーゲン産生およびコラーゲン特異的分子シヤペロンHSP47の産生を亢進させる3)同様にαデフェンシンがヒト肺線維芽細胞からの成長因子の産生を亢進させる。1)では以前われわれの共同研究者がPM10は気道上皮細胞からIL-8,IL-1beta,GM-CSF,LIFなどの炎症性メディエーターを産生することを報告している。今回の報告ではその炎症性メディエーターの産生機序に細胞内メッセンジャーであるカルシウムイオンが関わっているかを検討した。結果として上記のメディエーターのうちIL-8,IL-1betaの産生はカルシウム依存性であり、GM-CSF,LIF産生は非依存性であることを示し、PM10による気道上皮細胞からのメディエーター産生機序の一部を証明した。一方、2)、3)では主に好中球に存在するαデフェンシンが肺線維症で重要な働きをする肺線維芽細胞に対して直接作用し、コラーゲン産生や各種成長因子の産生を亢進させることにより線維化を促進させる可能性が示唆された
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