本研究では、小胞体ストレス経路の炎症病態への関与機構の解明を目的とした。転写因子C/EBPファミリーに属するCHOPは小胞体ストレスによって誘導される。以前我々は、炎症時にCHOPがcaspase-11誘導を介し、炎症性サイトカインであるIL-1βの成熟・分泌に関与していることを明らかにした。Caspase-11 mRNAは炎症以外の小胞体ストレス誘導刺激によってもCHOP依存的に誘導されるが、その意義は不明であった。今回我々は小胞体ストレス誘導剤によって誘導された場合には炎症時と異なり、alternative splicingにより2種類のcaspase-11 mRNAが誘導されることを明らかにした(caspase-11 & caspase-11s)。Caspase-11sは、発現ベクターを用いて過剰発現させても、蛋白として検出することが困難であり、非常に不安定な蛋白であることが示唆された。また、caspase-11sの意義をより明らかにするために、炎症と小胞体ストレスが共存する状態において実験を行った。マウスマクロファージ系細胞RAW264.7細胞をLPSとDTTあるいはツニカマイシンとで同時に刺激したところ、caspase-11蛋白の発現が抑制され、成熟型IL-1βも減少していた。以上の結果より、小胞体ストレス時には、caspase-11はshort formが発現するが、速やかに分解されるため、実際にはほとんど機能を果たしていないことが明らかとなった。
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