特発性間質性肺炎/肺線維症におけるthrombospondin-1(TSP-1)の関与を明らかにする目的で、特発性肺線維症(IPF)、非特異型間質性肺炎(NSIP)、sarcoidosis、健常人の血清および気管支肺胞洗浄液を用いてTSP-1濃度をELISA法にて測定した。血清TSP-1濃度は間質性肺炎群でsarcoidosisおよび健常者よりも有意に高値を呈し、気管支肺胞洗浄液中のTSP-1濃度は間質性肺炎群で有意に低値を示した。血清TSP-1濃度は同VEGF濃度と優位に相関しており、本疾患の病態におけるTSP-1の重要性が示された。さらに患者肺組織におけるTSP-1の局在を免疫組織化学的検討により確認し、再生肺胞上皮細胞および肺胞マクロファージの重要性が示唆された。以上の内容を学会で報告し、英国誌のRespiratoly medichleに掲載された。また、血清TSP-1濃度は特発性肺線雑症の急性増悪時におこなったPMX-DHP療法の前後で、生存例で有意に下降していた。 次にTSP-1に対するsiRNA(short interfering RNA)を数種類作製した。気道上皮細胞(A549細胞)をTGF-b1で刺激するとTSP-1が産生されるが、その産生をこれらのsiRNAが抑制できるかin vitroで繰り返し確認した。時間がかかったが、ようやく一つのsiRNAで良好な抑制効果がみられるようになった。肺線維症動物モデルは、ブレオマイシンの尾静脈投与の練習に時間がさかれたが、こちらも技術的に進歩がみられ肺の胸膜下に線維化巣を形成するモデルができたため、現在気道へのsiRNA-TSP-1投与方法を思案しながら、抑制実験にとりかかっている。
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