研究概要 |
近年,細胞内寄生菌の非定型抗酸菌やレジオネラ菌による呼吸器感染症が増加している。これら感染症は治療が困難な場合があり,生体が有している自然免疫を有効に作動させることが重要である。肺コレクチン(肺サーファクタント蛋白質A及びD:SP-A,SP-D)は,肺の自然免疫で重要な役割を果たしている。そこで本研究では,肺コレクチンを介するマクロージによる細胞内寄生菌の貪食促進分子機構を明らかにするために,肺コレクチンとこれら細胞内寄生菌に対する直接作用,及び,結合部位の同定を中心に研究をすすめた。 本研究の遂行により,肺コレクチンは,非定型抗酸菌の1つであるMycobacteria avium(M.avium)とカルシウム依存性に直接結合することが明らかとなった。さらに,M.aviumの細胞壁構成成分の1つである,lipoarabinomannnann(LAM)は濃度依存性にM.aviumとSF-Dとの結合を抑制した。しかし,SP-AとM.aviumとの結合にLAMは全く影響を及ぼさなかった。さらに,肺コレクチンは,いずれもカルシウム存在下でM.aviumの凝集を促進させ,EDTA存在下では肺コレクチンによる凝集効果は認められなかった。また,LAMの存在下においても,SP-DのみM.aviumの凝集が阻害された。以上の結果から,肺コレクチンはカルシウム依存性にM.aviumを凝集し,SP-DのリガンドであるLAMは,SF-DによるM.avium凝集効果を阻害することが明らかとなった。 また,肺コレクチンは,レジオネラとも直接結合することが明らかとなった。さらに,SP-Aとレジオネラとの結合は,SP-Aの糖鎖認識領域(CRD)をエピトープにもつ抗SP-AmAbで有意に抑制したことから,SP-Aのレジオネラに対する結合部位はCRDであることが示唆された。 本研究により肺コレクチンはレジオネラおよびM.aviumに直接結合すること,さらに,M.aviumに対する肺コレクチンの凝集効果が明らかとなった。
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