肺気腫や肺線維症は、進行すると呼吸不全に陥る疾患であり現在根本的な治療法がない。肺気腫や肺線維症により臓器不全に陥った肺を修復する治療法として肺の再生治療の可能性が期待されている。胸膜側にも肺胞再生に関与があることが推測されていることから、本研究では、肺気腫モデルマウスと肺線維症モデルマウスに肺再生因子の胸腔内投与を行い、その肺再生効果について検討した。始めに、正常マウスに肺再生因子(Hepatocyte Growth Facctor : HGF)の胸腔内投与を行い、胸膜の細胞増殖促進効果について検討した。対照として生食を、また肺再生因子としてHGF50ng/bodyまたはHGF100ng/bodyを胸腔内投与し、投与24時間後の胸膜の増殖細胞め割合を検討した。その結果、HGF投与群では対照群と比較して胸膜の増殖細胞の割合が増加していたが、HGF50ng/body群とHGF100ng/body群の比較では、胸膜の増殖細胞の割合に有意差はなく用量依存性の胸膜の細胞増殖促進効果は認められなかった。これらの結果より、エラスターゼ誘起性肺気腫モデルマウスとブレオマイシン誘起性肺線維症モデルマウスを作成し、各々にHGF50ngを胸腔内投与しその7週後に肺再生効果について検討した。その結果、エラスターゼ誘起性肺気腫モデルではHGF投与群と非投与群において肺気腫の改善効果は認められなかったが、ブレオマイシン誘起性肺線維症モデルではHGF投与群では非投与群に比較して肺の線維化の抑制が認められた。以上の結果より、肺再生因子であるHGFの胸腔内投与は肺気腫の改善効果は認められなかったが、肺線維症の改善に有効である可能性が示唆された。
|