研究概要 |
【目的】食塩感受性高血圧において脳内酸化ストレスを介した交感神経活動亢進が昇圧機序に関与している可能性を、19年度に報告した。酸化ストレスや交感神経活動は、メタボリックシンドロームの病態にも関与していると言われており、20年度は肥満高血圧においても同様の機序が関与している可能性を検討した。【方法】45%高脂肪食もしくは普通食を負荷したSbrague-Dawley(SD)ratを対象とした。抗酸化剤tempol, diphenyleneiodonium, apocyninを各々、ウレタン麻酔下、人工呼吸下でラットの側脳室に投与した際の、血圧、心拍数、腎交感神経活動の反応を2群間で比較検討した。また摘出した脳視床下部における酸化ストレスをルシジェニン化学蛍光発光法により測定し、さらにNADPH oxidase subunits mRNAの発現をreal-time RTPCR法にて定量した。【成績】高脂肪食負荷群は肥満高血圧を呈し、尿中ノルエピネフリン高値、交感神経遮断薬ヘキサメソニウムに対する過大反応から、交感神経亢進所見が認められた。抗酸化剤脳室内投与に対する血圧、心拍数、腎交感神経活動の低下反応も、普通食群に比較し有意に大きかった。さらに、視床下部由来の酸化ストレス値、NADPH oxidase subunit発現量は高脂肪食群において有意に亢進していた。【結論】肥満高血圧では、NADPH loxidaseによる脳内酸化ストレス上昇を介した中枢性交感神経活動亢進が昇圧機序に関与している可能性が示唆された。【展望】食塩感受性高血圧と肥満高血圧の両者で上記が示されたことは、メタボリックシンドロームの共通背景として脳内酸化ストレスを介した交感神経活動の亢進が関与している可能性があり、抗酸化作用を有する薬剤による中枢性の交感神経抑制が、メタボリックシンドロームの新たな治療戦略となり得る。
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