研究概要 |
ループス腎炎を代表とする自己免疫性腎炎において,自己反応性トレランスの破綻が発症に関与することが知られているが,その抗原提示細胞の対応抗原やeffector細胞との関連など不明な点が多い.樹状細胞はプロフェッショナルな抗原提示細胞として非リンパ組織を含め種々の臓器に分布し自己に対するトレランスにも関与しており、最近,炎症性疾患の進展過程において樹状細胞の果たす意義が報告されている.さらに樹状細胞の活性化においてシグナル伝達経路としてp38MAPKが関与することが報告されている.しかしながら、腎疾患における樹状細胞の浸潤・活性化ならびに疾患進展機序との関連は目下のところ十分に解明されてはいない.そこで全身性エリテマトーシスにおいて樹状細胞ならびにケモカイン,およびp38 MAPKの相互機序に着目し,進行性腎障害への関与とその制御による腎不全進展阻止の可能性にむけた研究を行った. この研究課題においてはヒト全身性エリテマトーシス類似の病態を呈するMRL-Fas^<lpr>マウスを用いて自己免疫性腎障害における樹状細胞(DCs)とp38MAPKの関与を検討した.MRL-Fas^<lpr>マウスの腎臓でDCsは疾患活動性に一致して増加した.p38MAPK抑制薬の投与により疾患活動性は低下し、DCsの浸潤も低下した.DCsの成熟に関与するサイトカインであるHMGB-1はp38MAPK抑制により発現が低下した.TNF-α,IL-1βにて刺激した培養未熟ヒトDCsはp38 MAPK抑制にて成熟化の抑制,HMGB-1分泌低下が認められた.以上よりDCsはp38MAPK活性化を介して自己免疫性臓器障害の進展に関与することが示唆された.これらの結果より樹状細胞の制御は自己免疫性臓器障害の新たな治療標的として有用であると考えられた。
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