研究概要 |
本研究では、加齢に伴う腎障害の分子機構を解明するためには、まず老化で蓄積する終末糖化産物(AGE)と糸球体硬化の制御因子を解析した上で、さらに、それらと老化関連因子との相互作用を解明する方法を選択した。まず、AGE刺激により糸球体メサンギウム細胞に惹起される新規増殖因子Gas6(Growth arrest specific 6)に注目した。そして、加齢に伴い腎にAGEが蓄積すること、AGEの刺激により糸球体のGas6の発現が亢進して加齢性糸球体硬化に関与していることを加齢マウスおよび培養メサンギウム細胞を用いて証明した。また、糸球体硬化の制御因子に関しては、糸球体硬化の主病態がメサンギウム細胞におけるIV型コラーゲンの増加である点に着目した。そして、我々のこれまでの研究で同定していたIV型コラーゲンの制御因子Smad1が糖尿病性腎症モデル動物における糸球体硬化でも中心的役割を果たし、糸球体硬化のバイオマーカーの候補となりえることを明らかにした(Diabetes 2008(57),1712-22)。次に、これらの要素(AGE,Gas6,Smad1)と老化関連因子の相互関連を解析するため、Gas6の下流に位置し、老化にも重要な役割を果たすシグナル分子Aktに注目した。そして、老化マウスでは、Gas6の発現とともにAktのリン酸化も亢進して糸球体硬化がおこること、そして、Gas6ノックアウトの加齢マウスにおいては、Aktのリン酸化抑制に相関して糸球体硬化が抑制されていことを証明した(国内学会で発表)。現在は、Smad1がIV型コラーゲンの転写を制御して糸球体硬化の中心的役割を果たすことをin vivoで証明するために遺伝子改変マウスを用いた糖尿病モデルを作成し解析中である。
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