腹膜透析の弱点は、透析液の貯留によって腹膜中皮細胞が障害を受け、腹膜が線維化する事である。我々は、自己骨髄(間葉系)幹細胞の移植によって、腹膜中皮細胞を再生し腹膜機能が回復するか検討した。 (1) ラット腹膜線維化モデルの作成 : ラットの腹腔内に0.1%グルコン酸クロルヘキシジン+15%エタノール生食液を、1日間および3日間投与し、その後、3週間後まで、経時的に腹膜肥厚の程度を計測した。また、採取した腹膜組織におけるTGF-β1、α-SMA、ED-1などの発現を免疫組織化学法にて確認した。腹膜肥厚は、1日間投与で2週間、3日間投与で3週間以上継続していることを確認した。以降は、1日間投与法を用いて作成した腹膜硬化モデルを使用した。 (2) 幹細胞による腹膜硬化症の改善効果の検討 : 0.1%グルコン酸クロルヘキシジンの投与の一日前および投与直後に、健常なラットから採取・培養した幹細胞を静脈および腹腔内に投与した。腹膜硬化モデル作成一日前よりも作成直後に、幹細胞を静脈および腹腔内注射することで、腹膜肥厚が抑制することが認められた。今後、経時的な腹膜機能検査を行い、腹膜機能が改善しているか検討する。 (3) 移植した幹細胞が腹膜中皮に生着するか? : GFPラットより採取・培養した幹細胞を上記で作成した腹膜硬化モデルに静脈および腹腔内に投与した。一日後に屠殺して、GFPの染色を行った。今後、移植した幹細胞が移植後どのくらいの期間、腹膜に生着しているか、幹細胞から腹膜に分化しているか検討する予定である。
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