研究概要 |
本研究はNPHPモデルマウスとしてのinv PRマウスの嚢胞腎での細胞増殖に関わるシグナルカスケードを解析し,さらに治療薬の開発基盤を作ることを目的として,inv PRマウスの嚢胞腎で変化しているシグナルカスケードの同定およびそのシグナルカスケードの阻害剤の投薬実験を行い,嚢胞腎治療薬の検討を行った。 その結果,嚢胞進展に伴い,MAP kinaseカスケード(Erk)の活性化が認められた。既に活性化することが知られているJNKシグナルやAktシグナルよりもErkの活性は嚢胞進展の早い時期であることからも,このシグナルカスケードが嚢胞化に深く関与することが示唆された。そこで,Erk上流のMEKの阯害剤であるPD184352を用いて,嚢胞腎への影響を検討した。 投薬により,嚢胞の腎重量の低下と腎機能の回復が認められた。さらに尿細管の拡張も押さえられた。また,嚢胞化の1つの現象である尿細管上皮細胞の異常増殖も低下し,さらに細胞周期関連因子の活性化も正常レベルまで抑えられた。 以上のことからNPHP2のモデルマウスにおいてErkカスケードの抑制することが嚢胞化の抑制に非常に効果があることが明らかとなった。すなわち,NPHPの嚢胞腎発症および進展にはMAP kinaseカスケードの活性化が深く関わる事が明らかとなった。さらに治療実験により,NPHPの嚢胞腎の治療薬開発の基盤となる結果が得られた。 これらの研究進展は計画通りであり,さらに活性化しているWntシグナルやp38シグナルを解析することにより,NPHPの嚢胞化の分子機構の解明並びに治療につながる基盤作りを推し進める研究になる事が期待される。
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