研究概要 |
胎児期において, 血管系の構築とその形態維持は, 腎などの器官形成に不可欠である。一方, TGF-βは血管新生に対し, 促進・抑制両方の調節作用を担うことが報告されているが, TGF-βの胎児血管萌芽時期における機能は十分に明らかにされてない。そこでマウス胎児背側大動脈のコラーゲンゲル3次元培養系にてTGF-βの形態的影響と, その機能について検討した。 摘出背側大動脈を筒状に裁断し, コラーゲンゲルに包埋し, 低酸素(5%), VEGF存在下に培養すると, 新生血管の萌芽が観察される。ここにTGF-β1を添加すると, 濃度依存性に新生血管数が減少した。TGF-β1の中和抗体, ALK5阻害薬にて部分的ながらTGF-β1の影響は相殺された。TGF-β2, TGF-β3, ActivinAでも同様に, 新生血管数が減少したが, BMP-2では新生血管数には変化がなかった。TGF-β1の中和抗体, ALK5阻害薬にて部分的ながらTGF-β1の影響は相殺された。siRNAによるALK1, ALK5の遺伝子ノックダウンした後, 摘出背側大動脈にvEGFとTGF-β1を添加したところ, TGF-β1の作用はALK5のノックダウンにてより強く, 相殺された。 われわれはこれまで, 低酸素下後腎培養液中にVEGFが分泌され, 同培養液にて摘出背側大動脈か照血管萌芽が促進されることを報告している。非萌芽背側大動脈ではTGF-β1, TGF-β2, TGF-β3, Activin A遺伝子の発現が認められ, 腎などの臓器由来のVEGFによる余剰的血管萌芽に対し, 背側大動脈内因性TGF-βが抑制的に作用していると考えられた。
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