申請者の研究室においてSLC22有機イオントランスポーターファミリーに属する新たなサブファミリー(novel type organic anion transporter (OATN) family)を同定し、その中の一つ、腎臓の近位尿細管に発現を示すOATN1の解析を行ってきた。ゲノムプロジェクトが終了した現在でも、輸送基質・生理機能の特定されていない、いわゆるオルファントランスポーターが数多く残されている。機能活性が見い出されたものであっても、従来の生理学研究で記載された輸送機能との対応付けが難しいものは、生理的役割を推察することが困難であり、生体内での機能を評価する手法が必要とされる。本研究では、ノックアウトマウスとメタボローム解析(capillary electrophoresis MS analysis)を組み合わせた検討を行うことで尿中化合物の網羅的分析をすることにより、以上の難点を克服し生理機能を明らかにした。生体内においてOATN1がケトン体の一つであるβ-ヒドロキシ酪酸を腎臓近位尿細管の管腔側膜において再吸収していることが明らかになった。ノックアウトマウスとメタボローム解析を組み合わせた本手法は尿細管トランスポーターの生理機能の解明あるいは再評価に有用であり、本研究は今後のトランスポーター研究のマイルストーンとなるものである。
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