研究概要 |
内因性ナトリウム利尿ペプチド系の肥満・メタボリックシンドローム関連腎障害における役割をナトリウム利尿ペプチドの受容体であるguanylyl cyclase-coupled receptor(GCA)の遺伝子欠損マウス(GCAKO)を用いて明らかにするため8週齢のGCAKO及びその対照マウス(WT)に高脂肪食(HF)による肥満モデルを作成し,8週後の尿アルブミン排泄,腎組織像を検討した。高脂肪食負荷後8週において,HF群はKO,WTとも通常食群(C群)に比し有意な体重増加を認めた。8週後においてHF-WT群はC-WT群に比し尿アルブミンの増加が認められなかったが,HF-KO群ではC-KOに比し有意な尿アルブミンの増加を認めた。腎組織はHF-WT群ではC-WT群と光顕上明らかな差は認めなかったが,HF-KO群では糸球体の明らかな腫大を認めた。しかし,メサンギウム基質の増加にはHF-WT群とHF-KO群で明らかな差は認めなかった。また電顕上HF-KO群ではfoot processの癒合,糸球体基底膜の肥厚が認められたが,HF-WT群ではそれらの変化は軽度であった。WT-1陽性細胞数による糸球体上皮細胞数の定量を行ったが,HF-KO群とHF-WT群間に差は認めなかった。しかしHF-KO群はHF-WT群に比しslit diaphragm関連蛋白であるnephrin遺伝子発現の低下を認めた。また一方糸球体硬化に重要なtransforming growth factor-βや糖尿病性腎症の進展に重要とされるvascular endothelial growth factor の遺伝子発現には両群で差を認めなかった。これらの結果からメタボリックシンドローム関連腎障害において糸球体上皮細胞障害が引き起こされ,GCAを介した作用がこれに防御的に作用している可能性が示唆された。
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