〈臨床的解析〉 我々は、AQP4強制発現させたHEK293細胞に対する患者血清の反応を見る系で、AQP4抗体の測定を行い、NMO患者における感度・特異度は90%を超え、非常に高い疾患特異性を有することを明らかにした。AQP4抗体価は、NMO患者の再発時の脊髄病変の長さに比例する事、ステロイド治療後には有意に抗体価は減少することなどを明らかにした。現在、抗体が作用する病態を明らかにするため培養系を確立する準備を進めている。これらの結果から、NMOは抗アクアポリン4抗体に関連して発症している事が強く示唆され、その事実を発信し大きくこの分野に貢献できた。 〈病理学的解析〉 NMO病巣においては、AQP4およびGFAPは、病変の早期から慢性期にかけて染色性が低下もしくは消失していたが、髄鞘は早期病変においては比較的保たれていた。一方、多発性硬化症(MS)においては、AQP4、GEAPともに脱髄病変部でむしろ発現は亢進しており、明らかにNMOとMSの病理学的特徴は相反するパターンであった。この結果NMOの免疫病態としては、早期からアストロサイトが障害を受けるのに対して、脱髄は二次的に生じている可能性が示唆された。NMOはMSとは異なり、アストロサイトの障害を起因として生じる疾患である事が示唆され、国内外から高い評価を得ており、その成果は2007年5月号のBrain誌に掲載され、多くの国内外との共同研究の足がかりとなっており、今後AQP4抗体の病原性を知る手掛かりを得て、内外から高い評価を得た。
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