研究概要 |
【今年度の研究目的】研究基盤となる疾患モデル細胞株を製作し,ポリグルタミン鎖の細胞内微小重合形成(オリゴマー形成)による細胞障害性を検証する。 【方法】ポリグルタミン鎖(部分DRPLA蛋白およびハンチンチンexonl)にmCFP (donor),mYFP (acceptor)を付加したプラスミドを作成し培養細胞(COS7)に一過性導入し共焦点レーザー顕微鏡(CSU10)を用いFRET解析を行った。さらにポリグルタミン鎖を安定発現するSH-SY5Y細胞株を確立し、レチノイン酸、BDNF添加により神経細胞に分化誘導後、FRET陽性細胞群、FRET陰性細胞群、封入体形成群の3群において細胞生存期間を観察した。 【研究成果】(1)ポリグルタミン鎖は、一定の方向性をもって蛋白間相互作用を示し、グルタミン伸長数依存性にFRET陽性細胞の出現頻度が増加した。(2)FRET陽性細胞の経時的観察では、一旦、封入体が形成されると、封入体のFRET値が急速に増大するとともに、細胞質のFRET値は急速に低下した。(3)ポリグルタミン鎖安定発現SH-SY5Y細胞での生存期間解析;FRET陽性細胞、FRET陰性細胞、封入体形成細胞の3群で平均生存日数は3.0日,4.0日、6.0日であった。すなわち、ポリグルタミンオリゴマーが形成されているFRET陽性細胞群では生存期間が有意に短縮し、すでに封入体を形成した細胞群では生存期間が延長していた(p<0.0001)。免疫染色による活性型Caspase-3の陽性率も、FRET陽性細胞群では封入体形成群に比べ有意に増加していた。 【考察・結論】ポリグルタミンオリゴマーを含有する細胞(FRET陽性細胞)は、細胞死のリスクが高いことを示した。また封入体形成はオリゴマー構造物を取り込み、細胞障害性に対し防御的に働くことが示唆された。オリゴマー形成はグルタミン伸長数依存性に増加する性質を有し、ポリグルタミン病の病態機序の基盤となる重要な細胞障害因子と考えられた。
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