アルツハイマー病(AD)の生物学的診断マーカーの新たな候補タンパクとして、糖タンパク質について解析を行った。最も有力な候補であるトランスフェリンは、髄液中・血液中共に糖鎖が変化していることを既に明らかにしている。 今年度は、血中トランスフェリンの糖鎖変化が診断マーカーとして有効であるかどうかを検討した。その結果、血中トランスフェリンの糖鎖変化は、ADの極軽度な群でも起こっており、この変化はADの病態の指標である髄液中アミロイドβタンパクの減少やリン酸化タウタンパクの増加よりも先行して起こっている可能性が示唆された。さらに加えてあと2種の糖タンパクを同定し、そのうち1種は血中において糖鎖が変化している可能性を見い出した。このタンパクもトランスフェリン同様、アミロイドβタンパクの減少やリン酸化タウタンパクの増加よりも先行して起こっている可能性が示唆され、これら2種の血中タンパクの糖鎖は早期診断マーカーとして有用であることを明らかにした。残り1種の糖タンパクは、少数例の検討であるが同様に糖鎖に異常がある可能性が示唆されいてる。 現在、これらの糖タンパクの糖鎖の異常部位の同定を行っており、さらに糖鎖量簡易測定法の確立を試みている。また、ADと鑑別の困難であるタウオパチーなどのAD以外の認知症との鑑別に有効であるかを検討している。さらに今後は、糖鎖付加の異常部位の同定を行い、病態との関連を解析する予定である。
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