研究概要 |
炎症性末梢神経疾患においては血液神経関門(blood-nerve barrier: BNB)の破綻が存在し,病気の進行に大きく関わっている. BNBは血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)に比し十分に解明されていないのが現状である.本研究の目的は血液神経関門の首座である神経内膜内微小血管内皮細胞を単離・培養し,BBBを構成する内皮細胞との共通点や相違点を明らかにすることである.なお,本研究は動物を使用するため,当施設の動物実験倫理委員会へ実験計画書を提出し,承認を得た後に研究を開始した.温度感受性SV40ラージT抗原トランスジェニックラットをC0_2ガスにて安楽死させ,坐骨神経を取り出した.実体顕微鏡下に神経上膜,神経周膜を丁寧に剥離除去し,酵素処理の後,dishに播種した.数代の継代を経て純粋な内皮細胞クローンを得た.得られた内皮細胞は高い電気抵抗値を有し,claudin-5, claudin-12, occludin, ZO1などBBBに存在するtight junction構成分子を発現していた.また,P-glycoprotein, ABCG2, MRP1などのefflux transporterやGLUT-1, system L, CRTなどのinflux transporterも幅広く発現していた. Claudin-5, occludin, claudinl2, p-glycoproteinおよびGLUT-1に関してはラットの坐骨神経組織を用いた免疫染色による解析にて蛋白レベルで発現していることを確認した.今回の研究結果からBNBを構成する内皮細胞はBBBを構成する内皮細胞と同様にバリアに特化した性質を有する細胞であることが明らかになった.本研究結果はBNBの生理機能解明のみならず,難治性末梢神経疾患の新たな治療法開発へつながりうる意義深いものである.
|