研究概要 |
炎症性末梢神経疾患においては血液神経関門(blood-nerve barrier : BNB)の破綻が存在し, 病気の進行に大きく関わっている. BNBは血液脳関門(blood-brain barrier : BBB)に比し十分に解明されていないのが現状である. 本研究の目的は血液神経関門の首座である神経内膜内微小血管内皮細胞を単離・培養し, BBBを構成する内皮細胞との共通点や相違点を明らかにすることである. ヒト坐骨神経由来の内皮細胞を用い, これらの内皮細胞株のもつ性質を解析した. 本研究はヒトの細胞を用いるため, ヘルシンキ宣言に基づき研究計画が策定され, 山口大学附属病院の倫理委員会にて認可を受けた後に研究を開始した. 材料として剖検にて得られたヒト坐骨神経を用いたため, ご遺族に対し説明後文書にて同意を得た後に研究を開始した. 得られたヒト神経内膜内微小血管内皮細胞株はBBBを構成する内皮細胞が発現しているclaudin-5, occludin, ZO1などのtight junction構成分子を発現しており, P-glycoprotein, ABCG 2などのefflux transporterやGLUT-1などのinflux transporterも発現していた. 本年度の研究結果および昨年度のラットを用いた研究成果から, BNBを構成する内皮細胞はBBBを構成する内皮細胞と同様にバリアに特化した性質を有する細胞であることが明らかになった. 本研究結果はBNBの生理機能解明のみならず, 難治性末梢神経疾患の新たな治療法開発へつながりうる意義深いものである.
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