日本人多発性硬化症(MS)患者に対するインターフェロンベータ-1b(IFNB-1b)治療の効果を免疫学的に評価し、さらに有益な予防効果を発揮させることを目的とし、その前提として、日本人MS患者の病型を確実に分類するための研究を行った。22名のMS患者に説明と同意の上で採血を行い、末梢血リンパ球(PBL)を採取し、real-time PCR法でFoxP3産生能を定量した。その結果、二次性進行型MS(SPMS)は健常対照と同程度にFoxP3産生能が高く、再発寛解型MS(RRMS)、視神経脊髄型MS(OSMS)の順に低い結果となり、これまでに我々が報告した末梢血T細胞の病的なクローン増殖の程度と逆相関の関係を示した。このことから、SPMSの末梢血では調節性T細胞が正常に近い働きをしているために、T細胞の病的なクローン増殖が抑制され、OSMSでは逆の病態を呈している可能性が示唆され、日本人MSは病型により有効な免疫学的治療法が異なることが予測された。この成果を日本神経免疫学会で発表し、討論を参考に追加実験を行った。第一に、Auto MACSを用いてPBLからCD4+CD25+T細胞分画を分離してFoxP3産生能を定量した。その結果、CD4+CD25+T細胞分画のFoxP3産生能は、PBLに比して約10倍であり、一方CD4+CD25-T細胞の産生能は約1/100であることが、再現性を持って示されたため、PBLの解析でCD4+CD25+T細胞のFoxP3産生能を代弁できると結論した。第二に、FoxP3産生能と逆相関があった末梢血T細胞の病的なクローン増殖の解析を、13名の患者検体で追加実験し、さらに有意な結果を得た。一方、抗AQP4抗体の新たな検出方法の開発を試み、pIRES2-EGFPベクターにヒトAQP4全長配列を組み込み、それをCHO細胞にトランスフェクションし、安定株を確立した。今後はFACSで定量する方法を確立し、患者血清での測定に入る予定である。
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