研究概要:骨髄細胞よりインスリン産生細胞(IPC)を作成し移植に使用することが出来れば、根本的糖尿病治療法となりうる。本研究では、骨髄細胞にPDX-1など膵β細胞の発生・分化に関わる転写因子の遺伝子を細胞に導入し、インクレチンの一つであるGLP-1の刺激を加えることにより、幹細胞からのより効率の高いIPCの発現を目指し、その分化プロセスに関わる転写因子発現などの解析を行った。 1. 6〜8週齢のマウスから単離した骨髄幹細胞を、単離後2日間DMSO添加したFCS(-)培養液で培養し、その後4.5g/L DMEMで培養すると約14〜21日目に約半数のdishで細胞の集簇、膵島様細胞塊が形成された。 2. CMV promoter下にPDX-1を発現するプラスミドをリポフェクション法により培養10〜14日目に骨髄幹細胞に遺伝子導入を行い、培養42日目にIPCの出現率を検討したが、PDX-1の発現はIPCの誘導にほとんど影響を及ぼさなかった。 3. インクレチン刺激がIPCの誘導に寄与するかを検討するため、GLP-1アナログのExendin-4(Ex-4)を培養液に10nM加え、PDX-1の強制発現の有無とEx-4の有無でIPCの出現率を検討したところ、Ex-4刺激下で有意にIPCの発現増加を認めた。 4. IPCのプロファイルを検討するため、β細胞に特異的なinsulin-1、insulin-2、PDX-1、GlucoseTransporter2、glucokinase、GLP-1受容体等の発現をRT-PCR法により検討したところ、PDX-1以外の発現は認められたが、PDX-1については強制発現していないものでは僅かな発現しか認められず、骨髄幹細胞からIPCへの分化誘導の際には重要な因子ではない可能性が示唆された。 今後IPCの分化誘導により重要な働きを持つ因子を検索し、IPC分化誘導効率を検討する予定である。
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