昨年度までに完成していた、rtTa-Tgマウス2ライン、TRE-Tag-Tgマウス4ラインを用いて、計8通りの組合せで、交配を行い、ダブルトランスジェニックマウスにドキシサイクリン負荷を行った。しかし、全ての組合せにおいて、胃グレリン細胞の増殖、血中グレリン濃度の上昇は認められなかった。ドキシサイクリン負荷により誘導されたSV40 T抗原の発現レベルが、細胞増殖を引き起こす域値に達していないことが示唆された。 新たにダブルトランスジェニックマウスを作成し直すことは、費用、時間的問題から、困難であると判断し、薬剤誘導性はないものの、従来行ってきたグレリンプロモーター下流にSV40T抗原を結合させたコンストラクトを用いたトランスジェニックマウスの作製を再び試みた。その結果、グレリン細胞の増殖は認められるが、腫瘍の進展が緩徐で、継代維持が可能である適度なSV40T抗原の発現レベルを持つラインの確立に成功した。このマウスでは、成長に伴って血中グレリン濃度が上昇し、最大で対照マウスの10倍程度の上昇を認めた。血中グレリン濃度の上昇に伴い、血清IGF-I値の上昇が認められ、血中グレリンの慢性的な上昇によりGH-IGF-I軸が刺激されたことが示唆された。 今後、このマウスのグレリン細胞腫瘍より、細胞株を樹立しin vitroでのグレリン生合成、分泌調整機構の解明を目指す予定である。 なお、今回の研究目的と直接の関連はないが、TRE-Tag-Tgマウスの中に、副腎に腫瘍が発生する1ラインを認め、小児癌の一種として知られる神経芽細胞腫に極めて類似した腫瘍であることを見いだしたため、論文報告している。
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