これまで、我々は、マウス・サルおよびヒトES細胞由来F1k1陽性細胞から内皮細胞および平滑筋細胞が分化することを明らかにしてきた。また、我々のグループの山下らは、同じマウスES細胞由来F1k1陽性細胞から心筋細胞も分化誘導されることを報告している。一方、F1k1陽性細胞にCreリコンビナーゼが発現される遺伝子改変マウスとCreリコンビナーゼによりLacZが発現する遺伝子改変マウスを掛け合わせることにより骨格筋および心筋に広くLacZが発現したという報告があり、骨格筋・心筋の両方がその発生分化の過程でF1k1陽性の時期を経ることが示唆されている。本研究では、ヒトES細胞由来F1k1陽性細胞からもう一つの筋細胞である骨格筋細胞の分化誘導を目指している。平成19年度は、まずマウスES細胞を用い、マウスES細胞由来F1k1陽性細胞からの骨格筋の分化誘導を試みた。マウスES細胞を分離しコラーゲンIVコートディッシュ上で10%血清存在下で分化誘導を行うと、分化誘導4日目にF1k1陽性細胞が約10%出現した。これらのF1k1陽性細胞をフローサイトメトリーにてソーティングし、10%血清下で分化誘導を行ったところ、これまでの検討と同様に平滑筋細胞が出現した。これらF1k1陽性細胞を低血清条件下・2%馬血清存在下などの骨格筋分化誘導条件下で分化誘導を試みたが、これらの条件下ではF1k1陽性細胞は十分に生育せず、骨格筋系細胞の出現は認められなかった。そこで、筋衛星細胞のセルラインと考えられているC2C12細胞の培養上清を用いて分化誘導を行ったところ、F1k1陽性細胞は良好に生育し、筋芽細胞と同様の形態的特徴を示す細胞群が出現した。
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