前駆脂肪細胞(3T3-L1)が脂肪細胞へと分化する過程において、機能スフィンゴ脂質であるスフィンゴシン1リン酸(S1P)産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ(SphK)のmRNAおよび蛋白質が著名に増加し(37.6倍、19.7倍、5日目)、発現上昇したSphKにより細胞内S1Pの生成は増加する。SphK-1に対する特異的なsiRNAを予め前駆脂肪細胞にトランスフェクションしSphK-1遺伝子がノックダウンしている細胞では、インスリン・デキサメタゾン・IBMX刺激(MIX刺激)による脂肪細胞への分化および細胞内SIPの生成は抑制される。さらに、aP2・PPARgmma・C/EBPalphaなど脂肪細胞への分化に関与する転写因子のmRNAの発現も著名に減少していることが明らかとなった。脂肪細胞の分化過程に関与しているSphK-1が、脂肪組織においても同様の結果が得られるか肥満動物のモデルマウスとして多用されるob/obマウスを用いて検討したところ、皮下脂肪組織においてSphK-1 mRNAの著名な発現上昇が認められた。さらに、マウス胎児から単離した初代培養細胞(マウス胎児繊維芽細胞)に脂肪細胞へのMIX刺激を加えると、SphK-1 mRNAは上昇する。脂肪細胞の分化に対するSphK-1の関与は、株化培養細胞以外の初代培養細胞および脂肪組織においても重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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