本研究の目的は、ステロイド骨疾患が骨細胞の機能不全によって起こるという仮説を証明し、これに基づいた新しい治療法開発の基盤を構築することである。具体的には、骨細胞でのみステロイドが働かなくしたマウスを作成することで、ステロイドを投与しても骨粗鬆症が起こらないことを証明し、ステロイド骨粗鬆症における骨細胞の役割を明確にすることである。 20年度では以下の結果を得た。グルココルチコイド受容体-floxマウスとDMP1-Creマウスを交配させ、骨細胞においてのみグルココルチコイド受容体を無くしたマウスを得ることができた。また、WTマウスに合成グルココルチコイドであるDexamethasone短期投与、さらに同じく合成グルココルチコイドであるprednisolone pelletを2ヶ月間継続投与し、骨形態計測、マイクロCTによる3次元の骨微細構造を解析し、骨代謝マーカーを用いた生化学的解析、定量的PCRによる遺伝子発現解析、また骨細胞に特異的な遺伝子発現の変化を解析した。結果、Dexamethasone短期投与では顕著な差はみられなかったが、prednisolone pellet投与では骨形成速度の減少がみられた一方、骨石灰化速度は上昇し、骨細胞のアポトーシスも観察された。加えて、IGFBP1(IGF-binding protein1)やMchr1(melanin-concentrating hormone receptor1)といったグルココルチコイド受容体のターゲットとなる遺伝子発現がprednisolone pellet投与によって骨細胞で抑制されていた。したがって、これらの結果と骨細胞特異的にグルココルチコイド受容体を無くしたマウスを解析することで、ステロイド投与における骨粗鬆症をグルココルチコイド受容体を制御することによって予防できるということを示すことができると考えている。
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