研究課題
我々がこれまで研究を蓄積してきた生理活性ホルモンに関し、心筋、血管、神経、脂肪の保護再生を含む新たな生理活性作用の検索を行った。本年度、我々はマウスリンパ浮腫モデルを用いた検討から、アドレノメデュリン(AM)に既報の血管再生のみならずリンパ管新生作用を持つことを見いだした(Cardiovasc Res. 2008;80(3):339-45)。即ち、同モデルにおいて、AMの持続投与により著明な浮腫改善ならびに病巣部における血管・リンパ管新生を認めた。更に本年度は、AMによるリンパ管内皮に対する生理作用およびそのメカニズム解析をin vitroにおいて行った。培養ヒトリンパ管内皮細胞において、AMは濃度依存性にその細胞増殖および遊走を促進した。これらの促進はAMのセカンドメッセンジャーであるcAMP、更にはその下流にあるErk1/2依存性の作用であることをcAMPアナログおよびMEK阻害剤、リン酸化Erk1/2の発現検討により証明した。更に、AMは培養リンパ管内皮細胞におけるVCAM-1やICAM-1の発現を著明に抑制したことから、AMはリンパ管内皮における炎症関連接着因子の発現抑制を介し、リンパ球浸潤抑制など炎症抑制作用を発揮するものと考えられた。このように我々は、当初血管拡張因子として同定されたAMにおいて、これまで知られていなかったリンパ管新生、炎症抑制という新たな生理活性作用を明らかにした。
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Endocrinology. 149
ページ: 483-491
Cardiovasc Res. 80
ページ: 339-345