「ヒト造血器腫瘍の新規分子標的療法の開発」を研究目的とした。我々はヒトT-ALL細胞株KE-37において新規Notch1遺伝子変異を見い出した。これはHDドメインの5020G→A(1674Q→S)という変異、およびPESTドメインの7378C→T(2460Q→stop)という変異であり、truncated Notchlの発現が増強していることが確認された。また同バンドはanti-cleaved Notch1抗体によって認識されることから、HDドメインの変異の結果、spontaneous cleavageを受け活性化型となった後、おそらくはPESTドメインの変異の影響によってhalf lifbが延長したものと考え照れた。但しNotchシグナル阻害剤であるγ-セクレターゼ阻害剤による増殖抑制は単剤では認めなかった。同剤抵抗性のメカニズムに関しては今後の課題である。次に我々はγ-セクレターゼ阻害剤が他の抗腫瘍薬剤と相加・相乗効果を有するかを検討した。その結果、ヒトTALL細胞株HPB-ALLにおいてデキサメサゾン(ステロイド剤)とγ-セクレターゼ阻害剤が相加的な抗腫瘍効果を有することをin vitroの解析で見い出した。HPB-ALLはγ-セクレターゼ阻害剤不使用時にはデキサメサゾンに対しほぼ抵抗性を有しているが、一方、γ-セクレターゼ阻害剤併用時にはデキサメサゾンに対し著明な感受性を有する。すなわちγ-セクレターゼ阻害剤によってデキサメサゾン抵抗性が解除されたと考えられた。このことは抗癌剤抵抗性のメカニズム解明に迫る重要な事象であると考えられた。
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