研究概要 |
昨年度に引き続き、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の臨床検体について、SNPアレイを用いてゲノムコピー数の変化の網羅的解析を行った。はじめに、ATLの検査目的に採取した検体(末梢血やリンパ節)の残余を用いてDNAを抽出し、GeneChip SNPアレイの通常のプロトコールに従い、アレイ解析を行った。データ解析は、研究代表者らが独自に開発した解析アルゴリズムを用いたソフトウェア(CNAG)を用いて行った。このアルゴリズムはアレイにより検出されるSNP毎のシグナル強度を、各種パラメータに対して高次・多重回帰分析などにより種々の補正を行うことにより、ノイズを除去し、コピー数の解析を行うものである。 昨年度および今年度のアレイ解析の結果、ゲノムのコピー数変化やheterozygosisを失う異常(loss of heterozygosis, LOH)がATLの検体において高頻度に集積する領域を同定することができた。続いて、そのような領域に存在するいくつかの遺伝子について、ATL腫瘍細胞株等を用いた機能解析を行い、ATLの発症・進展などとの関連性について解析を行った。現在、それらの研究成果をとりまとめ発表する準備を行っている。これらの研究結果は、これまで十分には明らかにされていなかったATLの発症・進展等の機序の解明につながり、さらには、ATLの新規治療法開発の基礎となるものであると考える。
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