成人T細胞白血病(Adult T-cell leukemia: ATL)は、極めて予後不良であり、新たな治療法の開発が望まれている。新規治療の開発には、ATLの病態に関連しかつ腫瘍細胞特異的に発現する分子を標的にすることが必要である。我々がSEREX法により単離したserine-arginine protein kinase l(SRPKI)は、正常組織での発現は精巣で高発現する癌精巣抗原様の発現形式で、正常人末梢血単核球や慢性型ATL細胞と比較し急性型ATL細胞ではmRNAおよび蛋白とも過剰発現していることが判明し、腫瘍特異的な標的分子の有力な候補であった。SRPKIは様々なsplicing factor proteinのserine-arginine(SR)domainsをリン酸化し、mRNAのalternative splicingを制御する分子である。 Alternative splicingによるpre-mRNAの調節は、蛋白の多様性を生み出し、組織や分化段階により異なる蛋白の表現型を獲得することに一役を担っているばかりではなく、ヒトの腫瘍化においてはその調節機構が破綻し、異常なsplicingによって癌細胞の異常な表現型に関与している可能性がある。 これらを背景とし、平成19年度には、SRPKIにたいするsiRNAをもちいてATL細胞株でのノックダウンをおこない、効率よく遺伝子発現の抑制が可能となった。これを用いて、細胞増殖やアポトーシスへの影響を検討したが変化はみられなかった。しかし、抗がん剤を投与した細胞株で検討をおこなうと変化がみられ、さらにがん関連遺伝子のalternative splicingやHTLV-Iウイルスの複製や遺伝子調整につき解析中である。
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