研究概要 |
白血病の原因遺伝子として転写因子と考えられているEvilを同定しており、機能解析を通して治療に貢献しようとしている。解析の過程で、Evilが過剰にアセチル化されていることが判明し、アセチル化機構解明が白血病の治療につながると考え、以下の研究を行った。 1.白血病細胞でのEvil過剰発現 ヒト急性骨髄性白血病由来AML1細胞およびMOLM1細胞にEvilを一過性に過剰発現すると、細胞増殖が促進されることが分かった。また、発現しているEvilをRNAiにより抑制すると増殖が抑制されることも判明した。現在、タグを付けたEvilの安定過剰発現細胞のスクリーニングを行っている。 2.Evilのアセチル化部位の決定およびアセチル化認識抗体の作製 Evilにはアセチル化される可能性があるlysineが40個あり、どれが機能的に重要か不明である。そこで、EvilにはCtBP結合配列があるので、前後に、活性に重要なアセチル化部位が存在すると考えて3つのlysine(559,561,564)をAlanineに変換した変異体を作製した。その結果、564番目のlysineをAlanineに変換したEvilは、転写活性化能が低下していることが明らかになった。559,561番目のlysineをAlanineに変換したEvilは、変化が見られなかったことから、564番目のlysineがアセチル化されることがその活性に重要であると推測される。564lysineがアセチル化されたEvilを認識する抗体を3種類作製したところ、1種類が特異的にアセチル化状態を認識できることが判明した。この抗体を用いて、ヒト白血病細胞を免疫染色やウエスタン法で調べると、Evilの564番目はアセチル化されていることが分かった。
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