研究概要 |
最近,膜5回貫通分子CD133は,G-CSF動員・末梢血(PB)未分花造血前駆細胞のマーカーであることが知られている。本研究では,hTERT遺伝子導入ヒトストローマ(HTS)細胞を用いた共培養システムで,PB CD133+細胞のex vivo増幅が可能か検討した。方法として5000個のPB CD133+細胞を,SCF,TPOおよびFLの存在下でHTS細胞と2週間共培養した。また,対照として臍帯血(CB)CD34陽性細胞を用い増幅効率を比較検討した。その結果,HTS細胞無しの培養ではほとんど増幅効果を認めなかったのに比較して,HTS細胞を用いてPB CD133陽性細胞を共培養した際には,その増幅効率は約100倍以上と劇的に増加した(CFU-C,2±0vs.111±15倍,p<0.01)。さらに,2週間の共培養の後の,PB CD133陽性前駆細胞の増幅率はCB造血前駆細胞と比しほぼ同等の増幅率を示していた(BFU-E,54±3vs.56±4倍;CFU-GM,156±26vs.83±9倍;CFU-Mix,30±11vs.80±36倍)。以上の結果より,ヒト骨髄間質細胞はCB CD34細胞と同等に,PB CD133細胞を効率的に増幅可能であることが明らかとなった。なお,2週間の共培養後にHTS細胞層の下に潜り込んでcobblestone areas(CA)を形成する細胞がPB CD133およびCB CD34でほぼ同数見られた。今後は,さらに長期培養することで,CB CD34と同様に血球産生が可能か否か検討するとともに,PB CD133細胞を細胞周期に入れ,増殖を誘導する因子についてスクリーニングする予定である。
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