研究課題
研究実施計画に従い、マウス骨髄移植モデルにおいて間葉系幹細胞(MSC)の細胞数、投与回数、及び投与時期などに工夫を加えてGVHDの抑制効果を検討したが、一定の治療効果は得照れなかった。一方で、IMSCの治療効果が同様の実験系で確認できたことがRenらによって報告された(Cell Stem Cell,2008)。われわれはMSCの免疫抑制メカニズムにnitric oxide(NO)が関与していることを報告したが(Blood,2007)、同グループよりin vivoにおいてもNOがGVHDの制御に中心的な役割を担うことが示された。従って本研究で期待された結果がほぼ報告されたため、更なる実験は追加していない。ほぼ同の実験系でわれわれが同様の結果を得られなかった原因は明らかではない。そこで平成19年度以降、あらたにMSCと細胞外マトリックスとの相互関係について着目して実験をすすめた。はじめにMSCが恒常的にヒアルロン酸を産生しており、活性化T細胞の存在下で低分子化されることを確認した。興味深いことに低分子ヒアルロン酸はMSCから免疫抑制物質のひとつであるPGE2の産生を誘導し、またIFN-γとの組み合わせでNOが産生されることを確認することで、炎症局所でMSCが免疫抑制効果を担うあらたな機序を示した。しかしながら用いるヒアルロン酸によっては低分子であっても必ずしもPGE2やNOの産生を誘導しないことが明らかとなり、試薬を再度検証したところ、一部にエンドトキシンの混入が確認された。すでにわれわれのグループはTLR4を介してエンドトキシンがMSCからPGE2やNOの産生を誘導することを報告しており、あらたな知見とはいえない。これまでヒアルロン酸がマクロファージなどの活性化に関与することが数多く報告されているが、いずれもエンドトキシンの混入が誤ったデータの解釈をもたらしている可能性がある。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Autoimmun 30(3)
ページ: 121-127