研究概要 |
末梢性T細胞リンパ腫は明確な疾患単位に分類し得ない症例は末梢性T細胞リンパ腫、分類不能型(PTCL-U)として扱われており,実際は複数の疾患が含まれていると考えられる。PTCL-Uは末梢性T細胞リンパ腫全体の半数近くを占めており,その再分類は重要なテーマである。これまで様々にその分類が検討されてきたが,いまだ明確な疾患グループを特徴付ける報告はない。またPTCL-Uに特徴的なゲノム異常も明らかにされていない。そこで本研究においてPTCL-Uのゲノム異常をアレイCGH法を用いて解析し,病理組織診断,臨床病態と相関させ,予後の異なるサブグループが抽出できるかを検討した。すでに施行済みであった20症例に加えて,本研究において新たに31例の末梢性T細胞リンパ腫、分類不能型(PTCL-U)症例に対してアレイCGHを行った。全51症例を解析した結果,ゲノム異常を見出せた症例26例と見出せなかった25症例に大きく分類できることを明らかにした。この二群において予後を比較するとゲノム異常を有する症例は有しない症例に比較して優位に予後不良であることが判明した。また,病理形態学的検討ではゲノム異常を有する症例は核異型を伴い,核の大きさは大小様々な所見を呈する症例が多いことも明らかにすることができた。一方,ゲノム異常を見出せなかった症例では,類上皮細胞浸潤や,好塩基球、形質細胞浸潤,血管細胞の増生などの腫瘍以外の細胞が増えていることも明らかにすることができた。PTCL-Uがゲノム異常のみならず,予後、病理像にも相関する二つのサブグループに分類できることをはじめて明らかにできた本研究結果は末梢性T細胞リンパ腫研究において非常に重要な知見である。
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