末梢性T細胞リンパ腫の中で、明確な疾患単位に分類し得ない症例は末梢性T細胞リンパ腫・分類不能型(PTCL-U)として扱われており、実際は複数の疾患が含まれていると考えられる。PTCL-Uは末梢性T細胞リンパ腫全体の半数近くを占めており、その再分類は重要なテーマである。これまで様々にその分類が検討されてきたが、いまだ明確な疾患グループを特徴付ける報告はない。またPTCL-Uに特徴的なゲノム異常も明らかにされていない。昨年度の本研究ではアレイCGH法を用いてPTCL-U51症例のゲノム異常を解析した。その結果、ゲノム異常様式のみならず、予後・病理像にも相関する二つのサブグループに分類できることをはじめて明らかにした。本年度はさらに発展させ、本研究で新しく見出したPTCL-Uサブグループと、他の末梢性T細胞リンパ腫病型の比較を行った。その結果、PTCL-Uの二つのサブグループの片方は、成人T細胞性白血病リンパ腫(ATLL)のリンパ腫型に非常によく似た病理像を呈することを見出した。このPTCL-UサブグループとATLLリンパ腫型はそのゲノム異常様式も非常によく似ており、PTCL-Uサブグループの高頻度ゲノム異常領域の約半分は、ATLLリンパ腫型でも同じく高頻度にゲノム異常が見られる領域であることを明らかにした。両群の予後曲線はほぼ重なっており、予後も非常に似ていることも明らかにした。これらの事実はこのPTCL-UサブグループがATLLリンパ腫型と似た臨床・分子病態をもち、且つ、比較的均質な症例で構成されていることを意味している。本年度の研究結果は末梢性T細胞リンパ腫研究において非常に重要な知見であり、論文報告した(Clinical Cancer Research 2009;15:30-38)。
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