Interleukin-12(IL-12)はマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞から産生され、Th1分化を誘導する重要なサイトカインである。研究代表者は前年度までの実績において、ヒトマクロファージ細胞株においてはIL-12産生がJNKアイソフォームであるJNK1の正の制御およびJNK2の負の制御を受けること、一方、末梢血単球由来樹状細胞においてはJNK1およびJNK2による正の制御を受けることを明らかにした。本年度は単球由来マクロファージも使用し、JNKアイソフォームによるIL-12産生制御とそのメカニズムについて検討を行った。 単球由来マクロファージにおいてはJNK1 siRNAおよびJNK2 siRNAの導入は、LPsによるIL-12産生を抑制したことから、単球由来樹状細胞と同様、IL-12産生はJNK1およびJM(2による正の制御を受けることが考えられた。次にJNKの上流に存在する分子の同定を試みた。Phosphoinositide-3-kinase(PI3K)はマウスにおいてはIL-12産生を制御することが知られている。研究代表者はヒトマクロファージ細胞株、単球由来マクロファージと樹状細胞へPI3K p110betaのsiRNAを導入した。その結果、すべての細剖種においてLPSによるIL-12産生は抑制された。一方、PI3K p110beta siRNAはLPSによるJNK活性化を抑制した。さらにJNK1とJNK2の活性化を個々に測定した所、PI3K p110beta siRNAはLPSによるJNK1の活性化を抑制したが、JNK2の活性化には影響を及ぼさなかった。以上のことからヒトマクロファージ細胞株、単球由来マクロファージおよび樹状細胞において、JNKアイソフォームよる異なったIL-12産生機構が存在するものの、すべての細胞種において同一の制御機構であったJNK1においてはPI3K p110betaからのシグナル伝達機構が存在することが明らかとなった。
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