今年度我々は、(1)IL-4によるAhRの発現誘導機序の解明、(2)B細胞以外の生体細胞におけるIL-4/IL-13によるAhR誘導及び活性化の検討、(3)IL-4によるAhR活性化機序の解明、に関して研究を行った。 (1)IL-4によるAhRの発現誘導機序の解析を行うため、ヒトAhR遺伝子の転写開始点より3kb上流の配列をプロモーター挿入部位に組み込んだレポータープラスミドを作製した。このプラスミドをHEK293T細胞に一過性発現させ、恒常的な転写活性を確認した。現在IL-4刺激、TCDD刺激などでプロモーター活性が変動するかどうかを解析している。またプロモーター配列を短くしたコンストラクトを計5種類作製し、IL-4刺激に反応する転写因子結合部位の検索が行えるようにした。 (2)気道上皮細胞や皮膚角化細胞は気管支喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患において重要な役割を果たす一方、生体内でダイオキシンに曝露される細胞でもある。そこで皮膚角化細胞、気道上皮細胞などを用いてIL-4/IL-13刺激によるAhR発現誘導の有無を解析した。その結果ヒト初代培養角化細胞、HaCaT細胞においてわずかにIL-4/IL-13によるAhR発現誘導が見られたが、TCDD刺激と比較すると誘導倍率は極めて低かった。またヒト気道上皮系細胞株であるBEAS-2BではAhR及びその下流の薬物代謝酵素の一つであるCYP1B1の発現誘導が認められた。 (3)IL-4がB細胞においてAhR、CYP1A1発現誘導を確認しているが、その機序や生理的意義は分かっていない。そこでIL-4刺激後のB細胞や皮膚角化細胞における薬物代謝活性の測定を行った。TCDD刺激後のHepG2細胞と比較すると薬物代謝活性の亢進は見られなかったため、現在細胞分画による精製ミクロソームを用いた検討を行っている。
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