研究概要 |
今年度我々は、(1)IL-4/IL-13によるAhR活性化機序の解明、(2)気道上皮細胞や皮膚角化細胞におけるIL-4/IL-13による薬物代謝酵素の発現誘導の解析を行った。 (1)AhRはHSP90といったシャペロンと結合して通常細胞質に存在しているが、TCDDなどのリガンドと結合すると構造変化によりシャペロンから解離して核に移行し、転写因子として機能する。我々はIL-4刺激を受けた際、AhRがTCDD非存在下で活性化する機序を解明するため、IL-4刺激B細胞を用いて抗AhR抗体による免疫沈降を行った。今後IL-4刺激下にAhRと特異的に相互作用するタンパク質をマススペクトロメトリーにて同定していく。またB細胞を分画し、ミクロソーム分画を用いて薬物代謝活性を測定したが、IL-4による活性亢進は認めなかった。これらの結果からB細胞においてIL-4により誘導されたAhRは薬物代謝酵素以外の標的遺伝子に対して作用している可能性を考え、クロマチン免疫沈降を行っている。 (2)気道上皮細胞や皮膚角化細胞は気管支喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患において重要な役割を果たす一方、生体内でダイオキシンに曝露される細胞でもある。我々は昨年度の検討により気道上皮細胞や皮膚角化細胞においてもIL-4/IL-13刺激によりAhR発現誘導されることを明らかにした。本年はその下流の薬物代謝酵素の発現誘導を確認するとともに、これらの刺激を受けた細胞の薬物代謝活性を調べた。B細胞ではIL-4刺激によりCYP1A1をはじめとする薬物代謝酵素の発現誘導が見られ、また気道上皮細胞においてもIL-4/IL-13刺激によりCYP1B1の発現が誘導されることを確認した。AhRはTGF-βやIL-1β, p27, Baxなど炎症や細胞周期の制御、アポトーシスなど様々な生体制御に関わる分子の発現調節に関与しているため、現在こういった分子の発現への影響も調べている。
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