関節リウマチ(RA)は関節の変形と破壊をもたらす慢性炎症性疾患である。2つの補体レセプター、Z39IgとCR4(CD11c)を共に発現する滑膜A細胞(Z39Ig+CD11c+細胞)はRA滑膜に特徴的に出現する。この細胞はRA病態にどのように関わるかを明らかにするため、当該細胞の、炎症性滑膜における検索、及び、性状解析を行った。まず、炎症性滑膜での検索として、変形性関節炎、乾癬性関節炎、early RAの滑膜切片に対し、抗Z39Ig抗体、抗CD11c抗体による免疫蛍光学的解析を行い、RAとの相違を検討した。その結果、当該細胞は、変形性関節炎及び乾癬性関節炎の滑膜ではほとんど検出されないのに対し、early RAではRAと同レベルに出現することを明らかにした。これは、当該細胞はRA病態に深く関わることを示すだけでなく、RAの病理学的診断にも有用であることを示す結果である。次に、性状解析として、まず、フローサイトメーターにより、Z39Ig+CD11c-及びZ39Ig+CD11c+細胞をソーティングし、電子顕微鏡学的解析を行った。その結果、Z39Ig+CD11c+細胞は、より多くの食胞様構造及び損傷ミトコンドリアを有することを明らかにした。さらに、マクロファージ及び樹状細胞の関連マーカーによる細胞表面形質の解析により、当該細胞は、樹状細胞ではなくマクロファージの新規サブセットであること、抗原提示分子を強発現していることを明らかにした。したがって、当該細胞は、高い貪食能と抗原提示能を介してRA病態に関わる可能性が示された。これらを関節炎誘発マウスで検討するため、ラット抗マウスZ39Ig単クローン抗体の作製に着手した。マウスZ39Ig遺伝子をクローニングし、ラットマストサイトーマRBL2H3に導入し、細胞株を樹立した。当該細胞株を用いてラットを免疫し、スクリーニングを行っている。
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