経口トレランスの破綻は食物アレルギー発症の原因となるとともに、乳児では難治性アレルギーマーチの発端となる可能性も示唆されており、原因を解明することはその治療法を確立する上でも重要である。本研究では昨年度までにSPFマウスで誘導される経口トレランスがGerm freeマウスで誘導されないことを示した。また消化管細菌叢の存在が消化管粘膜免疫組織での制御性T細胞(CD25^+CD4^+Foxp3^+)の誘導および制御性T細胞の制御機能維持に重要であることが明らかとなり、経口トレランス成立の要因の一つとして消化管細菌叢の存在意義が示唆された。 本年度は消化管細菌叢の有無が制御性T細胞の制御機能にどのように関与しているかについて検討を行った。それぞれのマウスの腸間膜リンパ節よりCD25^+CD4^+細胞を精製し、anti-CD3 Ab刺激下でのサイトカイン産生を測定したところ制御性サイトカインであるTGF-β、IL-10の産生量がGerm freeマウス由来CD25^+CD4^+細胞で有意に減少していた。そこで制御性T細胞の制御性機能についてTGF-βおよびIL-10またはその両方が関与するかを検討するため中和抗体を用いたin vitro co-culture system試験(昨年度実績報告書参照)を行った。その結果、IL-10の中和抗体添加では影響は認められなかったが、TGF-β中和抗体添加ではSPFマウス由来CD25^+CD4^+細胞の制御性機能がGerm freeマウス由来CD25^+CD4^+細胞の制御性機能レベルまで減弱することが示された。これらの結果より、消化管細菌叢の有無による制御性T細胞の制御機能の違いの一要因として制御性T細胞によるTGF-β産生量に起因することが示唆された。今後は制御性T細胞を誘導する消化管細菌の探索および消化管細菌叢の有無による制御性T細胞のTGF-β産生メカニズムについて検討していく予定である。
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