ケモカインCCL21/CCL19は、免疫系の制御を担うT細胞や、抗原をT細胞に提示する樹状細胞の遊走に関与している。本年度はこれらのケモカイン発現欠損マウス(plt)を用いて、免疫反応におけるケモカインの役割を検討した。 方法 1)マウスと免疫方法 BALB/c又はC57BL/6バックグランドのplt/pltマウスと、各々の野生型マウス皮下に、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)、OVA_<323-339>ペプチド、ニワトリ卵白リゾチーム(HEL)、HEL_<74-96>ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG_<35-55>)ペプチド、ミエリンベーシックプロテイン(MBP_<1-11>)ペプチド、アセチルコリンレセプター(ACR_<146-162>)ペプチド、プロテオリピッドプロテイン(PLP_<178-191>)ペプチドを完全フロイントアジュバント(CFA)と共に免疫した。 2)抗原特異的T細胞の反応性の測定 免疫後、マウスの所属リンパ節又は脾臓を採取し、それぞれの細胞浮遊液を調整後、試験管内で同一抗原を用いて再刺激を行った。抗原に反応する抗原特異的T細胞の増殖は3H-チミジンの取り込みにより、また培養上清中のIL-2、IFN-γ、IL-4、IL-10などのサイトカイン量はELISA法で調べた。 結果と考察 野生型マウスの皮下に、抗原をCFAと共に免疫すると、所属リンパ節では主にIFN-γを産生するるTh1細胞が優位に誘導されたが、pltマウスではMOG_<35-55>をCFAと共に皮下免疫すると、所属リンパ節T細胞からのIFN-γ産生が抑制された。この時Th1細胞を誘導するサイトカインIL-12mRNAの発現は低下していた。また、pltマウスではTh1タイプの自己免疫疾患であるEAEの発症が抑制された。従ってCCL21/CCL19はTh1細胞の分化誘導において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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