研究概要 |
本研究では、ケモカインCCL21-serとCCL19の発現を欠く突然変異マウス(plt)を用いて、T細胞の分化誘導におけるCCLI9、CCL21の関与を明らかにすることを目的とした。生体内ではT細胞と樹状細胞、との相互作用によりナイーブT細胞のプライミングが起こるが、pltマウスでは、抗原免疫後、抗原がどこへ運ばれていき、T細胞を刺激するのかを調べた。前年度の結果より、pltマウスでは実験的自己免疫性能脊髄炎(EAE)が発症しないのはケモカインの欠損によるものかを検討した。 方法 1) 抗原提示細胞の同定と機能解析 C57BL/6 pltマウスに蛍光抗原を免疫後、所属リンパ節甲の抗原を保持している細胞を、フローサイトメーターで検出した. また、分解されると蛍光を発する標識抗原を用いて、野生型マウスとpltマウスの抗原提示細胞における、抗原分解の違いを解析した。 2) EAE発症の検討 C57BL/6 pltマウスの皮下にMOG_<35-55>ペプチドをCFAアジュバントと共に免疫し、免疫0日目と2日目に、pertussis toxinを静注した. EAEの発症は0-5段階のスコアに分類した。 結果と考察 : WT、pltマウス共に、皮下免疫した抗原は、所属リンパ節でCDllc陽性, CDllb陽性細胞に取り込まれ、その細胞内では、抗原が分解されていことが示唆された。pltマウスの所属のリンパ節では、CDIlc陽性,CDIlb陽性、Grl陽性細胞の頻度が高かった。また、pltマウスではEAEの発症が抑制された。しかしEAEを発症した野生型マウスのT細胞をpltマウスに移入するとpltマウスでもEAEを発症した。EAEを発症した野性型マウスT細胞は、サイトカインIL-17を産生していたが、pltマウスではその産生は認められなかった。しかしpltマウスのリンパ節細胞をCCL21存存下で培養するとIL-17や、その産生細胞Th17の誘導、維持に必要なIL-23を産生するようになった. 従って、CCL19、CCL21はTh17細胞の分化誘導においても重要な役割を果たしていることが示唆された.
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