1. 研究目的 血球貪食症候群は、高サイトカイン血症による臨床症状、検査所見の変化をきたす疾患群である本研究では、血球貪食症候群症例の血中サイトカインを経時的に測定し、臨床プロブナイルと合わせて解析することで、高サイトカイン血症に基づく病態の解明、臓器障害メカニズムの細胞レベルでの解明を目指した。 2. 研究実施経過 自施設および他施設より提供していただいた血球貪食症候群7症例とコントロール症例において血清中の20種類のサイトカナイトカイン濃度を測定した。血球貪食症候群症例に関しでは、治療経過とともに経時的にサイトカンの測定を施行した。得られたデータを統計学的に解析をし、比較検討した。さらに臨床経過、他の血液検査所見と合わせて解析を行った。 3. 結果 血球貪食症候群7症例において、急性期にコントロール軍と比較し血中IL-2、TNF-α、MCP-1、MIP-1β、IL-8、IFN-γ、IP-10濃度の有意な高値を認めた。とこれらの値は寛解期には低下を認めた。さらに3症例について治療経過と合わせて解析すると、特にMCP-1とMIP-18β、IL-^8に関しては従来の血液マーカー(LDH、フェリチン、トランスアミナーゼ)と比較してより鋭敏な変動を示すことが認められた。統計学的な解析では、MCP-1とMIP-1βの間に相関を認めた。 以上の結果より、血球貪食症候群の病態において、IL-2、TNF-α、MCP-1、MIP-1β、IL-8、IFN-γ、IP-10といったサイトカインが重要な役割を果たしており特にMCP-1とMIP-1、IL-^8が病勢を鋭敏に反映していることを本研究で初めて示した。これら3種類のサイトカインの変動は従来の血球貪食症候群の活動性マーカーであるフェリテンやLDH、トランスアミナーゼといった血液テータよりも鋭敏であり、治療効果判定および治療方針の決定に有用なデータとして期待できると思われる。
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