iPS細胞の発明により、再生医学に対する関心は一段と高まりをみせている。幹細胞医療の臨床実現化を念頭に置いた際に、発達臓器の分化制御プロセスを詳細に解析し、幹細胞の再生プロセスに応用することは再生医学における重点課題である。胎児腎臓(後腎間葉)の発生プロセスを解明するための研究基盤としてまず後腎間葉における幹細胞・前駆細胞レベルの高度かつ安定した純化方法の開発を必須である。分化プロセスへの幹細胞システムの導入を評価するにあたり、クローナルなin vitro、in vivoでの分化アッセイ系の確立を目指し研究を遂行した。 まず、フローサイトメトリーを用いマウス胎仔後腎における表面抗原の網羅的発現解析を行った。c-kit、integrin familyなど各種幹細胞マーカーを含めた膜表面抗原の網羅的解析により、一部の細胞群を選別可能な表面マーカーを6ケ同定した。また、胎仔後腎の一部に代表的な幹細胞群であるside population細胞が存在することを確認した。 アッセイ法の開発として、腎臓発生に必須な分子であるwnt4蛋白過剰発現フィーダー細胞との共培養でのコロニーアッセイを行い、幹細胞・前駆細胞活性のある細胞群を判定するin vitroアッセイ系の再現に成功した。同時に、キメラマウスを作成することによる発達腎臓のin vivoアッセイ系の再現にも成功した。 今後フローサイトメトリーによる解析成果を元に細胞の選別を行い、in vitroアッセイ系を用いて、幹細胞・前駆細胞活性のある細胞群を判定する。複数マーカーを用いた細胞ソーティングの組み合わせにより、幹細胞・前駆細胞をより高率に含む画分の抽出を目指す。さらに、in vitroのみならず、キメラマウスを用いた幹細胞のin vivoアッセイ法の応用開発を行う。この成果に関して、国内外の学会発表および英文論文投稿を予定している。
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