予後不良の疾患と考えられている11q23転座型白血病で、FLT3が高レベルで発現し、恒常的にリン酸化されていることが報告された。この11q23転座型白血病に対する新たな治療の可能性を探るため、FLT3 inhibitorであるPKC412の、抗腫瘍効果とその機序について、明らかにすることを目的として解析を進めている。 平成19年度までで、我々はPKC412添加後のアポトーシス関連遺伝子の蛋白発現の変化を検討したが、FLT3/TKDD835/I836変異を有する細胞株では、Bim ELが増加し、FKHRL1は脱リン酸化されていた。従って、アポトーシスの誘導機序は、FKHRL1の脱リン酸化によるBimの発現増加を介することが示唆された。しかし、FLT3/TKDD835/I836変異のない細胞株では、アポトーシス関連遺伝子蛋白の明らかな発現変化は認められなかった。 これら、FLT3/TKDD835/I836変異のない細胞株における、PKC412添加後のアポトーシス誘導は、現在までのところ、不明である。我々は平成20年度、これら細胞株について、ROS(Reactive Oxygen Species)などとの関与について、検討してきた。PKC412添加後、DCFDA及びdihydroethidiumを用い、ROSの測定を行ったが、細胞株による、および薬剤の有無による、有意な差異は観察されなかった。さらに、ROS inhibitorであるNAC(1-acetyl L-cystain)を添加し、PKC412添加後の細胞株のviabilityについて検討した。確かにNAC添加後は細胞のviabilityが救済されていることから、PKC412添加後のアポトーシス誘導機序は、ROS経路を介していることが示唆された。他の経路を介する可能性についても含め、詳細について現在検討中である。
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