研究概要 |
若年性骨髄単球性白血病(JMML)は顆粒球・マクロファージ刺激因子(GM-CSF)への過剰反応を特徴とする疾患である。その原因としてJMMLの約7割の患者の白血病細胞において、GM-CSFレセプター/RAS/MAPK系伝達経路に位置する3つの遺伝子:PTPN11、RAS、NF1のいずれかに異常が見つかっている。我々は49例の日本人JMML患者においてこの3つの遺伝子異常を検討したところ、それぞれ45%、16%、4%に異常がみられた。臨床像を比較検討するとPTPN11遺伝子異常のある患者は、そのほかの患者に比べて診断時年齢が高く、HbFが高値で、かつ生存率が低かった。このため遺伝子異常がJMMLの新しい予後因子となると結論付け報告した(Clinical features and prognostic impact of GM-CSF signaling pathway-related genes in juvenile myelomonocytic leukemia, N Yoshida, H Yagasaki, A Yoshimi, et. al.現在投稿中)。 また研究責任者は日本小児血液学会骨髄異形成症候群(MDS)委員会の中央診断を行っているが、この1年間にJMMLの疑いで登録された症例のうち、4例の男児においてWASP遺伝子検査で変異を確認し、フォローサイトメトリーによりWASP蛋白発現の欠損を証明し、Wiskott-Aldrich症候群(WAS)と確定診断した。過去にこのような報告はなく症例報告を行うとともに(N Watanabe, A Yoshimi, et. al. J Pediatr Hematol Oncol. 2007)、同様の症例を集積して論文作成中である。これまでにJMML疑いとして名古屋大学小児科に遺伝子検査依頼のあった男児の骨髄検体のうちPTPN11、PAS遺伝子異常を認めなかった症例8例においてWASP蛋白の発現を検討したが、異常は認めなかった。
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